数ある翻訳アプリが既に存在している中、ついに公式が翻訳アプリをリリースしました。今回はそのアプリを検証して、「アプリの使い方」「他アプリとの機能の違い」「メリット・デメリット」を紹介します。
翻訳エンジンはGoogle翻訳
画像のとおり翻訳エンジンは「Google翻訳」です。翻訳の精度としては「DeepL(ディープエル)」よりかなり劣りますが、決して悪くない翻訳エンジンです。過去によく使われていたShopify翻訳アプリ「Langshop(ラングショップ)」は翻訳精度がすこぶる悪いので、Langshopを使うくらいなら「Translate & Adapt」を使用するほうが良いでしょう。
2言語まで無料で翻訳できる
無料で2言語まで翻訳できるのは非常に嬉しい条件ですね。特殊な例でない限りは、1言語目に「英語」。英語圏だけでも、かなりの国をカバーできるので問題ないかと思います。
テキストを編集した後の再翻訳が無料でできる
一度翻訳を実行したあと、元のテキストを編集すると、再度「翻訳処理」を実行する必要があります。このアプリも例外なく翻訳処理の再実行が必要です。しかし再度翻訳を実行しても「2言語」の範囲内であれば、ずっと無料なのは良いですね。
同じShopify翻訳アプリの「Langify(ランギファイ)」の場合、あらかじめ「自動翻訳可能単語数」を購入しておく必要があります。その単語数の上限に達するまでは自動翻訳処理が実行できます。
他のアプリと比較するとShopify公式翻訳アプリの無料っぷりのありがたみが更に理解できます。
マーケットごとにニュアンスを変えた翻訳ができる
他のShopify翻訳アプリとちょっと違う点が、この「マーケットごとに翻訳内容を変える」という機能。
Shopifyには「Markets」という機能があります。ザックリとした例を言いますと「北アメリカ」「ヨーロッパ」という地域を設定して、地域ごとに「含まれる国」「対応言語」「対応通貨」「配送料」などといった細かい設定をすることができます。
「北アメリカ」「ヨーロッパ」のどちらにも「英語」を「対応言語」として設定した場合、どちらも同じ翻訳内容が適用されるのが普通です。しかしShopify公式翻訳アプリ「Translate & Adapt」は、マーケットごと(「北アメリカ」と「ヨーロッパ」それぞれ)に別の翻訳内容を適用することができます。
「”別の翻訳内容”ってどういうこと?」と思われると思います。分かりやすい例を以下に出します。
例:日本語→英語
日本語:セーター
アメリカ向けマーケット英語翻訳:Sweaters
イギリス向けマーケット英語翻訳:Jumpers
日本では「セーター」と呼ばれる商品は
「アメリカ英語」では「Sweaters」
「イギリス英語」では「Jumpers」と呼ぶわけですね。
同じ英語でも呼び方が変わったり、表現のニュアンスが違ったりすることがあります。そのあたりの「微妙な違い」も対応可能となります。
とはいえ、これは筆者の所感なのですが、こういった地域ごとの「言葉の微差」まで対応できるマーチャント(販売者)はごく少数だと考えられます。例えば、翻訳にお金をかなり掛けられる資金力のある企業か、販売先の国をかなりピンポイントに絞っている企業などですね。
この機能自体は将来的にかなり有効な機能にはなると思いますが、現時点で使いこなさなければいけないほど優先度が高いモノでもないと思われます。
ポリシーページは手動翻訳のみ
ポリシーページだけは、自動翻訳ボタンが表示されません。これはおそらく誤訳によるビジネスリスクの発生を避けるためかと思われます。
プライバシーポリシー・シッピングポリシー・返金ポリシーなどが自動翻訳の誤訳で、本来意図していた内容とは違った内容になってしまった状態を放置すると、トラブルの元となります。
非常に重要かつ繊細な内容のページなので、自動翻訳をさせない方針を取ったのだと考えられます。
言語セレクターはGeolocationかテーマ標準搭載を使う
「言語セレクター」とはECサイト上に、言語を切り替えるためのプルダウンボタンです。「Translate & Adapt」には「言語セレクター」をECサイトに設置する機能がありません。Shopifyのテーマによって言語セレクター機能を標準搭載しているモノもあります。
使用するテーマに「言語セレクター」が標準搭載されていない場合は、「Geolocation(ジオロケーション)」というShopify公式アプリを使用することで設置できます。
しかしGeolocationは、様々なサードパーティAppと相性が悪いことが多く、うまく機能しないケースが多々あります。そのため言語セレクターが標準搭載されているテーマを、なるべく選ぶようにすることをオススメします。
例えばShopify公式テーマ「Dawn」は標準搭載されています。テーマの機能使用はテーマダウンロードページに詳細が記載されているので、必ずチェックしてください。
ページビルダーAppで作ったページの翻訳は条件次第で可能
ページビルダーAppとして「Pagefly(ページフライ)」「GemPages(ジェムページ)」を検証しました。
まずPageflyは、翻訳対象としてアプリが認識しなかったため翻訳をすることができませんでした。PageflyはもともとLangifyとWeglot(ウェグロット)を翻訳アプリとして推奨しています。この2つのアプリはJavaScriptを駆使してサードパーティAppの翻訳することができます。Translate & Adaptはこの機能を持っていないためPageflyを翻訳対象として認識することができません。
GemPagesは、そのアプリの仕様上(詳細は割愛)Translate & Adaptが翻訳対象として認識することができました。しかし言語セレクター設置用のGeolocationとは相性が悪く、Geolocationの言語セレクターで言語を切り替えても翻訳した文章に切り替わりません。そのため言語セレクターを標準搭載しているテーマを使用することをオススメします。Shopify公式テーマ「Dawn」に標準搭載されている言語セレクターを使用すると、GemPagesで作成したページが翻訳されて表示されることを確認済みです。
海外SEO対策は基本部分についてはOK
「“海外SEO対策”の”基本部分”って何?」ってなるかと思いますが、そのあたりの詳細は別の記事で解説したいと思います。
画像のとおり「hreflang」に関しては「言語コード」「国コード」がちゃんと記載されているのが分かります。これはShopify管理画面の「Markets」で設定した内容が反映されています。この「hreflang」の記載があることで、設定した国で設定した言語の検索結果に表示されるようにGoogleが認識してくれます。
とはいえサイトのタイトルやディスクリプション、コレクションや商品のタイトルやディスクリプションのSEO対応といった、細かい設定については自力でコツコツと対応する必要があります。このあたりは「海外SEOの最適化」の領域ですね。
ということで「海外SEO対策」の「基本部分」は自動実施されているので問題なしと言って良いでしょう。
サードパーティAppの翻訳は課題点が多そう
翻訳アプリのよくある課題として「サードパーティAppを翻訳できるかどうか」というモノがあります。
例えば日本向けにECサイトを構築して、日本製のアプリを使用していたとします。そのECサイトを使って越境販売にも対応できるようにカスタマイズするために翻訳アプリを使用すると、商品タイトルや説明文は翻訳できても、アプリで表示した文章やボタンの文字が翻訳されずに、日本語のままになっていることが多くあります。これは翻訳アプリが他のアプリの機能を翻訳対象として認識していないため起こる不具合です。
Shopify公式翻訳アプリも、どうようの事象が多発して、マーチャントを苦労させる可能性は十分に有り得ます。
検証結果の感想
今回の検証の感想としては「規模の小さいShopifyサイトなら結構使える」という結果になりました。
注意する点としては、
- ページビルダーAppは「GemPages」を推奨
- 言語セレクターは「テーマ標準搭載」のモノを使用することを推奨
- 使用予定のサードパーティAppに関しては、あらかじめ翻訳可否の確認を推奨
といったところです。3に関しては重点的に確認してもらえるとトラブルを未然に防げるかと思います。
「Translate & Adapt」はShopify公式翻訳アプリなので、今後たくさんアップデートされることが予想されます。Geolocationみたいに使いにくいまま放置されているケースもあります。しかしShopifyECサイトの「グローバリゼーション」を推進したいShopifyにとっては、「Translate & Adapt」がより使いやすくなることは重要な要素になるはずなので、より使いやすくなるようにドンドン更新されていくかと思われます。今後に期待ですね!