AI の着せ替えは、過去にも様々あったけれどもなかなか性能が満足のいくものがありませんでした。画像がぼやけたり、ちゃんと着せ替えができていなかったり、ものすごく違和感のある着用画像だったり。そんな状況でかなり高性能なAIモデルが出てきました。それが「IDM-VTON」。
まずは実際にどんなものか見てみよう
まずは百聞一見にしかず。端的で分かりやすい動画を見てください。その後に詳しい話をしていきます。
動画をご覧いただきましたでしょうか?簡単に着せ替えができて、その着せ替え具合も相当高精度です。めっちゃすごい…。
動画でざっくり分かったら、次はデモで実際に体験してみた方がいいので、デモURLを貼っておきます。
デモページURL:https://huggingface.co/spaces/yisol/IDM-VTON
デモは体験しましたか?実際に「どれだけ簡単に着せ替えができるか?」という体験をしておくことは、非常に重要なので是非デモを試しておいてください。
実際に使うには?
さて実際にデモじゃなくて使ってみたいと言った場合、どうやって使うのか?
それが先ほどの動画でも解説されている通り「Google Colab」を使います。「Google Colab」はインターネット上で、プログラムを実行してテストできるGoogleのツールです。
一般的に使われているPCだと、こういった画像生成のAIを使う時に、PCの性能が足りないということがあり得ます。「Google Colab」を使えば、そういう問題が発生しません。
今回の着せ替え機能を使う場合は、高性能なバージョンを使わなければいけないので有料版に課金する必要があります。無料版でできなくはないと思うんですが、おそらくうまく動かなかったり止まったりするので有料版がおすすめです。
あとは動画に沿って同じように実践すれば、IDM-VTONを実践することができます。
着せ替えできるのは上だけ?
デモや動画で解説されている内容としては上半身だけの着せ替えで終わっています。ただ別の動画では下半身の着せ替えもできています。しかし動画を見れば分かりますが、複雑なUIを使ったプロンプト設定になっているので、初心者の人には非常にハードルが高い。
ただ「下半身も着せ替えができる」ということが理解できていれば現時点ではOKと思ってください。
商用利用は可能?
私個人ではちょっと詳しいところまで調べきれなかったんですが、この着せ替えAIモデル自体がまだ研究段階での発表なので、この機能自体を何か加工してサービスを作るといった商用利用はNGだと思った方がいいです。
またこの機能を使って、独自で撮影したモデルの画像と、独自のブランドの商品画像等を掛け合わせた「着せ替え画像」も、このAIモデルの生成物の一部と解釈することもできます。
この辺りは解釈次第になりますので、自分で勝手に使ってネットショップで着せ替え画像を登録して商品を売っていくということは自己責任でお願いします。一番無難なのはこの研究をした大元に問い合わせをして確認をすることです。
おそらくGoogle ColabでこのAIモデルを使って、自分が所有権を持っているモデル画像と商品画像を掛け合わせた着せ替え画像を使うことは大丈夫だとは思うんですが、万が一のことを考えて問い合わせておく方が良いでしょう。
今後、予想される性能アップ
さて、このAIモデル「IDM-VTON」は、かなり高精度な着せ替え機能を持ち合わせたAIモデルでした。さらに欲しい機能としては「サイズ感の確認」ですよね。つまりS/M/L/XLどのサイズだと自分の身長や体型にフィットするのかを、自分自身で確認できればよりありがたいですよね。
販売者側としては、1ポーズのモデル画像だけで色々と着せ替えできるだけでも十分に恩恵を得られるでしょう。正直モデルの撮影費用だったり、拘束時間を考えると数10万円〜数100万円の費用を節約すると言えます。
だいぶ先の未来になるかもしれませんが、今後、自分の身長・体重・胸の周囲・腹の周囲・腕周りのデータを入力してもらうことによって、より高精度なフィット感の確認をすることもできるようになるでしょう。
昔、zozotown創業者の前澤さんがやろうとしていたことですね。おそらく今後身体データが取得されるような時代になってくるので、その身体データが自動的に反映されて服のサイズを選ぶことによってフィット感を確認するなんていうユーザー体験が提供できるような未来が待ってると思います。
一旦まとめ
さて一旦のまとめとして、箇条書きでパパッと書きます。
- 着せ替えAI「IDM-VTON」は十分なレベルに達した
- デモ版あるのでひとまず体験しよう
- Google Colabを使ってモデル画像と商品画像を使って着せ替えよう
- 着せ替え画像が商用利用可能かどうかは念の為大元に問い合わせよう
AIの技術だなんだと言ったと難しい話を抜きにすると上記4つが伝えたいことでした。
画像生成AIで高度になってくると、WEBサービスではなく「Google Colab」を使って、コマンドを打って、UIを立ち上げてから、AIを活用する、なんてことがザラです。
Stable Diffusion(ステイブルディフュージョン)を使っている人であれば苦も無くできることですが、全くの初心者の場合はハードルが高く感じるでしょう。
ですが事業者の方であれば、絶対にAIは使い慣れてほしいところ。是非頑張って使い慣れてください。
ということでひとまずのまとめを終わります。その他技術的な話だったり小難しい話に興味がある場合は以降を読み進めてください。
そもそもIDM-VTONとは?
IDM-VTONとは、インペイント(画像補完)を不要にし、単なる画像だけで人物の服装を簡単に変更できる革命的なツールです。これを使えば、面倒な手動編集や複雑なソフトウェアの操作なしに、AIが自動的に指定した服を人物画像に着せてくれます。
IDM-VTONの技術的概要
深層学習と生成モデルの基本
IDM-VTONは、深層学習と生成モデルの技術を基盤としています。深層学習とは、多層のニューラルネットワークを用いてデータからパターンや特徴を学習する技術です。この技術は、画像認識、音声認識、自然言語処理など、さまざまな分野で革新的な成果を上げています。
生成モデルの一つであるGAN(Generative Adversarial Networks)は、データから新しいデータを生成するために使われます。GANは、生成ネットワークと識別ネットワークの2つのネットワークが対戦することで、よりリアルなデータを生成します。しかしこの方法だとどうしても「着せ替え」を目的とした場合に、十分な精度が得られませんでした。
そこで別の手法としてIDM-VTONが開発されています。(まだ開発中)つまり「IDM-VTON」GANベースのAIモデルとは別物です。
IDM-VTONの動作原理
IDM-VTONの仕組みは以下の通りです:
- TryonNet:人物画像を処理する主なネットワーク。
- IP-Adapter:衣服画像の高レベルの特徴をエンコードするモジュール。
- GarmentNet:衣服画像の低レベルの特徴をエンコードするモジュール。
UNetの入力として、ノイズを加えた人物画像、セグメンテーションマスク、マスク画像、Denseposeを使用します。衣服には詳細なキャプションを付け、GarmentNetとTryonNetの入力プロンプトとして利用します。
ザックリいうとこれら3つの機能を使って、そのデータをうまく融合する設定で高精度な「着せ替え」を実現できてきているよというお話です。
3. ユーザー体験の向上
現在の操作手順とその課題
現時点でのIDM-VTONの操作手順は、主にGoogle Colabを利用して行われます。以下がその基本的な手順です:
- Google Colabにアクセスし、新しいノートブックを作成します。
- 必要なランタイムの設定を行います(Python 3、GPUを選択)。
- ソースコードをコピーして、Google Colabに貼り付けます。
- コードを実行し、IDM-VTONのインターフェースを起動します。
- 人物画像と衣服画像をアップロードし、画像生成を開始します。
- 生成された画像をダウンロードして保存します。
この手順は、技術的なバックグラウンドがあるユーザーには比較的簡単ですが、初心者にとっては敷居が高いと感じるかもしれません。特に、Google Colabの設定やコードの実行に慣れていない場合、操作が複雑に感じられるでしょう。
直感的なユーザーインターフェースの必要性
IDM-VTONをより多くのユーザーに使ってもらうためには、直感的で使いやすいユーザーインターフェースが必要です。現在の操作手順の複雑さを解消するためには、以下のような改善が考えられます:
- 専用アプリケーションの開発:ブラウザ上で動作する専用アプリケーションを開発し、ドラッグ&ドロップで簡単に画像をアップロードできるようにします。
- リアルタイムプレビュー機能:衣服を選択した際に、リアルタイムでプレビューを表示し、結果を確認しながら操作できるようにします。
- ガイド付き操作:操作手順をステップバイステップで案内するガイド機能を追加し、初心者でも迷わずに操作できるようにします。
これらの改善により、IDM-VTONはより多くのユーザーにとって使いやすいツールとなり、普及が進むでしょう。
4. 技術的課題とその解決策
生成精度の向上方法
IDM-VTONの生成精度を向上させるためには、いくつかのアプローチが考えられます。まず、データセットの多様性を増やすことが重要です。訓練データに様々なポーズや背景を含めることで、モデルが幅広い状況に対応できるようになります。
データセットの多様化
データセットの多様化は、生成モデルの性能を向上させる鍵です。現実の世界では、人物が様々な環境や状況に置かれています。したがって、訓練データにも多様なシーンを含めることで、モデルがよりリアルな画像を生成できるようになります。例えば、日常生活の中での動作や、異なる光の条件下での写真をデータセットに追加することが効果的です。
高度な生成モデルの導入
GAN(敵対的生成ネットワーク)のような高度な生成モデルを導入することも、生成精度を向上させるための有力な方法です。GANは、生成ネットワークと識別ネットワークが競い合うことで、よりリアルな画像を生成する能力があります。特に、StyleGANなどの最新の生成モデルを活用することで、生成される画像の質が飛躍的に向上します。
ポストプロセッシングの重要性
生成された画像をさらに高品質にするためには、ポストプロセッシングも重要です。ポストプロセッシングとは、生成後に画像の品質を向上させるための処理を指します。例えば、エッジをスムーズにするフィルタリングや、色調整を自動的に行うアルゴリズムを組み込むことで、より自然な結果を得ることができます。
5. ユーザビリティの向上
直感的な操作機能の提案
IDM-VTONのユーザビリティを向上させるためには、直感的な操作機能を追加することが重要です。具体的には、以下の機能が考えられます:
- ドラッグ&ドロップ機能:画像のアップロードを簡単にするために、ドラッグ&ドロップで画像をアップロードできる機能を追加します。これにより、ユーザーは煩雑なファイル選択操作を行わずに済みます。
- リアルタイムプレビュー機能:ユーザーが衣服を選択した際に、リアルタイムでプレビューを表示し、結果を確認しながら操作できるようにします。これにより、ユーザーは生成される画像のイメージを事前に確認でき、操作が直感的になります。
データプライバシーの確保
ユーザーが安心して自分の画像をアップロードできるようにするためには、データプライバシーの確保が必要です。具体的には、以下の対策が考えられます:
- データの匿名化:アップロードされた画像データを匿名化し、個人情報が特定されないようにする技術を導入します。
- データの暗号化:データの送受信や保存時に暗号化を行い、第三者による不正アクセスを防止します。
- プライバシーポリシーの明確化:データの取り扱いについて明確なプライバシーポリシーを設け、ユーザーに対して透明性を保ちます。
6. 応用範囲と将来展望
アパレル分野での応用
IDM-VTONは、ファッション業界で大きな可能性を秘めています。例えば、オンラインショッピングの際に、ユーザーが自分の体型に合った服を仮想試着できる機能を提供することで、購入前にサイズやフィット感を確認することができます。また、ファッションショーやコレクションのプレゼンテーションでも、リアルタイムでモデルの衣装を変更することが可能です。
さらに、アパレル分野でIDM-VTONを使うことで、モデルの撮影費用が大幅に削減できる可能性があります。例えば、同じポーズで柄の違うTシャツやカラーの違うTシャツなどを簡単に変更できるため、モデルはシンプルなポーズを撮影するだけで済みます。これにより、撮影の時間とコストも削減できるのです。
ゲーム・映画でのキャラクターデザイン
ゲームや映画のキャラクターデザインにも、IDM-VTONは応用できます。リアルタイムでキャラクターの外見を変更できるため、クリエイティブな作業が効率化されます。例えば、ゲーム開発では、プレイヤーがキャラクターの外見をカスタマイズできる機能を提供することで、より没入感のある体験を提供できます。
医療分野でのリハビリ支援
医療分野では、IDM-VTONをリハビリ支援に活用することができます。リハビリ中の患者が自分の動作をリアルタイムで確認し、正しい姿勢や動作を学ぶことができるようになります。また、手術シミュレーションにおいても、医師が手術の計画を立てる際に、仮想的に患者の体の一部を変更することで、より正確な手術計画を立てることが可能になります。
7. 結論
IDM-VTONの可能性と今後の展望
IDM-VTONは、AI技術を活用した革新的なツールであり、画像だけで簡単に着替えをさせることができます。この技術は、ファッション業界、エンターテインメント業界、医療分野など、様々な分野での応用が期待されます。さらに、ユーザー体験を向上させるための直感的な操作機能や、生成精度を向上させるための技術的な改善が進めば、より多くのユーザーにとって便利で使いやすいツールとなるでしょう。
最後に
IDM-VTONの未来は非常に明るいです。このブログを通じて、皆さんがこの技術の魅力と可能性を理解し、実際に使ってみたいと思っていただけたら幸いです。今後も技術の進展と共に、さらに便利で革新的なツールが登場することを期待しています。それでは、また次回のブログでお会いしましょう。